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LITERALLY

知っておくと楽しい知識をまとめて紹介

差別化とブランディングの4つの切り口

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大抵のマーケットには競合がいる。この競合と真っ向から戦っても勝てない場合、どうするか。

第1に、そこで戦うことを辞める。

第2に、商品の価値を何か革新的な方法で競合以上に向上させる(それができたら苦労はしないのだけど)

第3に、差別化をする。

 

差別化とは、ただ競合の製品と表面的な部分を変えることではない。差別化とは”ユーザーにとって意味のある差”を作ることだ。たとえば、次のような点で差を作る。

  • 購入ユーザー
  • 使用用途(場所、ケース)
  • 提供方法・提供スピード
  • 品質・アフターケア

いくつか事例を紹介する。

 

1. 購入ユーザーで差別化する

第1に、競合ではカバーできていない新しい顧客を取りに行く。競合商品Aには"ある理由"から購買意欲が湧いておらず、商品も購入していないユーザーがいる。そこで、"ある理由"をクリアし、Aを棄却する顧客に振り向いてもらえるような商品設計をする。

第2に、競合商品に不満を感じながらもしぶしぶ購入している顧客を取りに行く。競合商品Aを購入するユーザーの中には、Aに"ある点"で不満を感じているにも関わらず、他に代替商品がないため、しぶしぶ購入している人がいる。これらのAユーザーを奪い取ることを狙い、"ある点"をクリアするような商品設計をする。

言ってしまえば、差別化とはこの2点に集約される。

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分かりやすいパターンで言えば、ターゲットユーザーを価格設定により差別化することだ。例えば、スマートフォンの場合、品質を取っても使い勝手をとっても、ブランドをとっても現状、日本メーカーにはiPhoneを超える製品は作れない。真っ向勝負をしてiPhoneを越えるのにはもう少し時間がかかりそうだ。

そこで狙うべきは、iPhoneにサクッとお金を出せないような顧客層だ。「金銭的理由からiPhone購入を断念してしまった人たち」、あるいは「iPhoneを購入したものの金銭的に非常に苦しい思いをして、次はもっと安い値段のスマホを買いたいと思っている人たち」だ。中国のシャオミやOppoはその戦略で成功した。良品廉価を打ち出し、iPhoneの半額近い値段で、そこそこのスマートフォンを提供した。その結果、シャオミは会社設立からたった5年で1億6000万人という膨大なスマホユーザーを築いた。

一方で、日本の電機メーカーは揃って誤った戦略をとった。シャープも富士通もソニーもNECも社運をかけて驚くほどの投資をしてスマートフォンを開発した。これらのメーカーはきっと次のように考えた。「iPhoneには真っ向から戦っても勝てそうにないから差別化しよう。よし、iPhoneにはない機能をつけよう。角がカクカクのスマホにして、画質をiPhoneより綺麗にして、ワンセグにも対応させて、SDカードも使えるようにしよう。手書き入力機能や画面2分割機能なんかもつけよう」こんな具合だ。機能を多くつけることで結果としてiPhone並みあるいはiPhone以上に価格は高くなった。それでも「これだけ機能をたくさんつければ、iPhoneにも勝てるかもしれない」と思ったかもしれない。

しかし、実際には、画質に不満を感じていてiPhoneを棄却するユーザーも、手書き入力を求めてiPhoneを棄却するユーザーも、ワンセグのためにiPhoneより性能の劣るスマホを買うユーザーも殆どいなかった。

結果、ボロ負けした。各メーカーが過剰なほどの販促活動を行ったものの、結果として買わされたユーザーは大きな不満を感じ、すぐにiPhoneに切り替える羽目となった。日本メーカーは、間違いなく差別化の方向を間違えた。ただ表面的に商品に差を作るのではなく、狙うユーザーを変えて勝負を挑むべきだったのだ。

 

2. 使用用途(場所、ケース)で差別化する

24時間の生活のうち、どこを狙うのか。同じジャンルのモノであっても、使用場所、使用状況を切り分けることで顧客を獲得できるかもしれない。

以前「R25」というフリーペーパーがあったことを覚えている人はいるだろうか。2004年の創刊後、たちまち話題呼び、多くの人に読まれたフリーペーパーだ。2週間に1回の発行部数は50万部を超えていたというから驚きだ(うち何冊が読まていたのかということはさておき)。

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R25はコンテンツ自体も素晴らしかったが、何より事業として戦略的だった。R25創刊者(リクルート)は、25〜34歳の男性団塊ジュニアサラリーマンをターゲットにし、彼らが1日の長くを過ごす通勤のスキマ時間に目をつけた。当時、スマホはまだ出ておらず、都市部のサラリーマンの多くが電車通勤の時間を寝たり、本を読んだり、ガラケーでメールをしたりして過ごしていた(そのうえ地下鉄では電波はほとんど繋がらなかった)。多くの人が長い時間を過ごす割に、コンテンツが少ない”電車のスキマ時間”には大きな事業性があったのだ。

そのことに気がついたリクルートは、電車のスキマ時間で読んでもらえるよう、フリーペーパーの設置場所のほとんどは地下鉄のホームにあるラックとした。そして、コンテンツもターゲットゾーンが好むものに厳選した。似たようなコンテンツを発信しているメディアはあったが、電車通勤サラリーマンのスキマ時間を狙い撃ちしたメディアは他になかった。そこは、あきらかにブルーオーシャンだったのだ。ほとんどの人が電車通勤時でもスマホを触るようになった今では、R25のフリーペーパーとしての存在意義はなくなったが、当時、間違いなく戦略勝ちした商品と言えるだろう。

 

3. 提供方法・提供スピードで差別化する

同じ商品であっても「商品をいかにユーザーの納得のいく形で、ユーザーの手元に届けられるか」ということも売れ行きを左右する重要な要素だ。世の中には、無駄に店舗に訪れることなく通販で買うことを好む人もいれば、手間をかけてでも直接店舗でモノを見て買いたい人もいる。また、店員と強い信頼関係を作った上で買いたいという人も未だに多くいる。競合の商品の届け方に対して不満を感じている層を見抜き、そこを狙うのも戦略だ(言ってしまえば1の「購入ユーザーで差別化する」にも通じる)。

ここではヨドバシの話をしたい。Amazonや価格.comの台頭により、ほとんど家電量販店が苦しむ中、ヨドバシだけは好調だ。ヨドバシは、他店舗経営に力を入れず、少数の実店舗を活かしつつ、ネット通販戦略に舵を切った。顧客が店頭で商品を検討して、購入自体は通販サイトで行う「ショールーミング」を促進するような体制をとった。

ヨドバシの店頭商品にはすべてバーコードが付いており、スマホで読み取ると画面に在庫状況・取り寄せ時間・競合価格が表示される。店頭で商品を生で見て、レジに行かずにそのままアプリで通販購入しても多額のポイントがつく。住所やクレジットカードを登録しておけば面倒な手続きはない。そして、配送はAmazonを超えるほど速い。都内であれば、最短で6時間で届くのだ。これらの戦略と努力により、ヨドバシは「家電製品は実際にモノを見て買いたい」という人の心をガッシリ掴んだ。ヨドバシは家電量販大手の中で唯一快進撃を続けている。商品の提供の仕方も、売れ行きを決める重要な要素なのだ。

 

4. 品質・アフターケア

売れば終わりではない。価格よりも、機能よりも、商品に対する信頼性(≒品質)や、アフターサービスの充実度合いにより商品を選ぶ人は多くいる。競合よりも品質の高い商品を提供したり、充実したメンテナンス体制を作り上げることで、「安心面」で顧客を訴求することも1つの戦略だ。

品質とアフターサービスに注力して成功したメーカーといえば、やはりトヨタだろうか。トヨタは設立以来、小さな不具合も見逃さずに改善を続けてきた。結果として、車のデザインはイマイチでも、壊れにくさだけは群を抜くことになった。アフリカでは中古車をろくなメンテナンスをせずに、水のような燃料を入れながら何十年も乗る。そんな中トヨタ車だけは、壊れずに走った。中東では、当時ランドクルーザーでないと走れない砂漠があった。日本では、多くの店舗を構え、故障や不具合があれば、すぐに近くの販売店にかけこめるような体制をとった。さらにトヨタ車は修理がしやすいように車が設計されている。サービス部品も世界中で手に入りやすい。これが結果としてトヨタのブランド力を上げた。今となっては、どのメーカーの車も高品質となったが、代々築いてきた「壊れにくい」というイメージこそがトヨタの快進撃につながっているのだ。

 

差別化とは、商品を表面的に変えることではない。一部のユーザーであっても、そのユーザーが競合商品よりも満足できるような差を作ることこそが重要なのだ。

 

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